** 講演 **
1)中性子線の産業利用 〜 中性子で何が観えるのか 〜
放射線利用振興協会 中性子利用技術部次長 石井 慶信 氏(S48B)
要旨
材料開発や製品開発を進めるには物を観ることが非常に大切である.物を観る
ための“光”としては可視光線,赤外線,紫外線,X線、電子線、中性子線など
がある.中性子が物質透過能力,磁気検出能力,水素やリチウムなどの軽元素検
知能力に長けているので,中性子線は物質の観察・分析のための有用なツールと
なり得る.この有用な中性子線を利用するには原子炉や核破砕型中性子利用施設
へのアクセスが必要なため,中性子利用は一般的に敷居が高いと云われていた.
近年,リチウムイオン電池材料開発,工業材料・製品の健全性評価,農業分野,
高分子材料開発,磁気材料開発など多岐にわたる分野において,中性子線を利用
して開発研究を行う企業が年々増加してきている.
本講演では,6年間にわたる文部科学省「中性子利用技術移転推進プログラム」
の実施成果を基軸に中性子産業利用の事例を紹介するとともに,中性子施設の利
用方法にも言及する.
2)陽電子がつくるエキゾチックな原子とイオン
東京理科大学 理学部物理学科教授 長嶋 泰之 氏
要旨
陽電子が反陽子と束縛すれば、最も簡単な反物質である反水素になります。以前は
反物質はSF小説にしか出てこない架空のものでしたが、近年の技術の発展によって
その生成が可能になってきました。また陽電子は、電子と束縛してポジトロニウム
と呼ばれる水素原子に似た束縛状態になることがあります。さらにもう1つの電子と
束縛して、陽電子1個と電子2個からなるポジトロニウム負イオンになることもあり
ます。最近、ポジトロニウム負イオンを効率よくつくることができるようになりこ
の分野の研究が大きくに発展してきました。一見、単なるエキゾチックなイオンで
何の役にも立たないように見られがちですが、近い将来、身近なところで使われる
ようになるかもしれません。
本講演では、陽電子がつくるエキゾチックな原子やイオンの研究について紹介いた
します。