理窓 2017年1月号
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4 新年あけましておめでとうございます。 皆様におかれましては、健やかに新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。また、日頃から本学の教育・研究に対してご理解をいただき、誠にありがとうございます。就任してから約一年半が経過しましたが、おかげさまで同窓の皆様から温かいご支援を得ながら、様々な課題解決に向けて取り組むことができましたこと、厚く御礼申し上げます。 さて、皆さんご存知のとおり、夏目漱石の小説「坊っちゃん」と関わりのある本学ですが、漱石の作品である「行人」に、このような一節があります。「人間の不安は科学の発展から来る。進んで止まることを知らない科学は、かつて我々に止まることを許してくれたことがない。徒歩から車、車から馬車、馬車から汽車、汽車から自動車、それから航空船、それから飛行機と、どこまで行っても休ませてくれない。どこまで連れて行かれるか分からない。」 これは、登場人物である「兄さん」の科学の発展が想像を超えて飛躍していくことに対する思いを描いています。近頃、テレビや新聞などで人工知能(AI)やIoTに関するニュースをよく目にするようになりました。欧州の囲碁チャンピオン、ファン・フイ氏は、米グーグル傘下の企業が開発した囲碁の人工知能とロンドンで対局し、結果として負けてしまいました。従来、複雑なゲームとされる囲碁は指し手が無数にあり、勝つためには人間の「直感」に似た何かが必要と考えられていました。ファン氏が敗北するまでコンピューターは人間より10年は遅れていると言われていましたが、科学は我々の想像よりも早いスピードで進化を遂げています。 凄まじいスピードで科学が進歩していくと、将来的にコンピューターが人知を超え、人間から単純労働だけでなく、知的労働や様々な作業を全て奪ってしまうのではないかという声をよく聞きます。しかし、私はそのようには思いません。なぜならば、コンピューターが自ら考え、自発的に人間を排除しようと行動しない限り、そのような事は起こり得ないからです。科学の発展は私達の生活を豊かにするため、また、世界中の様々な問題を解決するために存在するものであり、これらを生み出していくのは人工知能ではなく、私たち人間だからです。 そのためにも、立派な科学者や技術者を育成するためには、学生時代にしっかりとした教養を身に付け、倫理や道徳を持った人格を形成していくことが極めて重要です。科学や技術を用いて社会に貢献できる人材を育てるには、改めて教養教育が重要であると認識しています。広い視野を持って確かな基盤を築くこと。そのうえで専門課程を経て専門性を向上していくことが何より大切なのです。本学を卒業した学生として、備えるべき資質を教養教育で身に付ける。「実力主義」に加え、物事を考える習慣や人とのつながりを重視し、人に優しい人間性豊かな人材育成を本学の教養教育の基本的指針とし、各教員がこの指針を意識して学生に教育する体制を整えていきたいと考えています。 広い視点で物事を捉える教育という意味では、グローバルな感覚を育成することも欠かせませ2017理事長挨拶2017理事長挨拶理窓会の皆様へ理窓会の皆様へ学校法人東京理科大学学校法人東京理科大学  理事長理事長  本山本山  和夫和夫

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