海外修学旅行を通して考えたこと
教職員部会長 森本 均(S54 理工・数)
過日、修学旅行先で台北市立内湖高級工業職業学校と交流してきました。生徒達は英語でやりとりしながら親交を深めたようで、お互いの国や若者気質を知るよい機会となったのではないかと思います。
台湾の後期中等教育は「高級中学」と「高級職業学校」に分けられます。それぞれ日本で言うところの「普通高校」と「専門高校」に該当するようですが、校長先生に伺ったところ、どちらの学校も大学進学率は非常に高いとのことで、私たちが訪れた学校も例外ではなく進学率は98%に上るとのことでした。
他にも教育部(日本の文部科学省)が積極的に高校理系科目優秀者教育、高級中学における第二外国語の設置などを行ってきているとのことで、軍人が教師を務める「国防」の授業にも驚きましたが、それ以上に台湾の教育熱の高さに驚かされて帰国した次第です。
近年、台湾に限らず、中国、韓国なども国を挙げて教育に投資し成果を上げているようで、例えば、世界的な大学ランキングひとつ取ってみても、その躍進ぶりには目を見張るものがあります。が、同時に日本の存在感の低下も実感せざるを得ません。※1
国の第2期教育振興基本計画では「教育投資の在り方」の中で「欧米主要国を上回る質の高い教育の実現が求められており、そのためにも、必要な予算について財源を措置し、真に必要な教育投資を確保していくことが必要。」と記しています。是非とも「世界に冠たる教育立国日本」と胸を張れるように取り組んでもらいたいと願うところです。
ところで、千葉県に目を向けてみると、昨年10月に策定した「千葉県総合計画」の中で「千葉の未来を担う子どもの育成」を目標に「世界に通じ未来を支える人づくり」を政策のひとつとして掲げており、具体的な取組の例として「グローバル人材の育成」などと並んで「教職員の質・教育力の向上」なども記されています。
特に、「教職員の質・教育力の向上」は教員の高齢化とも相まって大きな課題になりつつあるのではないかと現場をあずかる者としても強く感じています。8月に文部科学省より出された「学校教員統計調査 平成25年度(中間報告)」によると、千葉県の公立高校の教員の平均年齢の高さは全国4位の47.4歳、なおかつ50歳代が5割以上を占める(こちらは全国2位)という状況※2 になっており、このまま推移していけば10年後には約半数の教員が入れ替わることが予想されます。
増加傾向にあるとは言えまだまだ貴重な戦力である20代、30代の教員に5割以上を占めるベテラン教員が自ら培ってきた教育技術をどのように引き継いでいくかによって、ある意味これからの千葉県教育が左右されてしまうと言っても過言ではありません。
私たち理窓会千葉支部としても、大学当局の力もお借りしながら、夢や希望を持って教職に就いた若者達に対し、先輩教員が蓄積してきたノウハウを組織的に伝授していくことが大きな使命のひとつではないかと考えます。教育の未来を託す若者達に対して何ができるのか、皆様方の御意見、アイディア等もいただきながら、積極的に取り組んで参りますので、御支援、御協力のほどよろしくお願いいたします。
台湾の高校生だけでなく、本校を訪れる東南アジアの国々の若者達の目の輝きに真の「生きる力」を感じるときがあります。他国と教育力で競い合うだけでなく、そのような若者達と共に手を取り合って明日の世界を築き上げていける子どもたちの育成に努めなければと、修学旅行を終えて改めて強く感じたところです。
最後になりましたが、会員の皆様のますますの御活躍を衷心よりお祈り申し上げます。
※1 2010年の大学ランキングで200位以内の大学数は日本5大学、中国6大学、韓国4大学、台湾4大学。前年、日本は11大学ランクインしていた。(台湾は1大学であった。)
※2 全国平均は平均年齢が45.8歳、50代の占める割合は38.4%である。